宮沢賢治と音楽について、“賢治の詩にジャズという言葉が”という事件?がきっかけとなり、どんどん調べていくうちにその深みは底が見えない。とうとう日頃あまり聴かないクラシックの世界へ。
賢治の代表作「心象スケッチ・春と修羅」には実にたくさんのクラシックが登場します。それらのSP盤を探しているうちにアルバム1枚でも余るほどの数が集まりました。それらをまとめ上げたのが第2弾「心象スケッチ『春と修羅』」。
完成後、花巻の「林風舎」を訪れ、宮沢和樹さんに聴いていただきたいと思い差し出しました。曲のラインナップを見て、
開口一番 “『春と修羅』といったらやっぱり「田園」じゃないの?”。 ドキ!。
実はこのアルバムにはその「田園」が入っていないのです。
『春と修羅』の中の詩「小岩井農場」に、その情景を映し合せる絶好の曲がベートーヴェンの交響曲第6番「田園」と言われています。賢治は小岩井農場で一日を過ごし、その情景を「小岩井農場」の詩に織り込みました。“「田園」を静かに聴き分けてみると小川の流れ鳥の声が聞こえる”と云ったそうです。第2楽章の終わりごろにカッコウの鳴き声が聞こえ、まさに「田園」の情景そのものです。
なぜその「田園」を収録しなかったか? その理由のひとつは、「田園」全楽章を収録するとそれだけで40分以上になってしまうこと。第2楽章だけでも11分を超える。収録したい曲がたくさんあったため。
それと賢治が聴いたと思われる本命盤 J・パスタ―ナック指揮・ビクター管弦楽団 Victor.35275 、フィッツナー指揮・ベルリン新交響楽団 Polydor.69643-44 の盤を探し当てることができない状況だったことも理由の一つでした。「田園」は結局第3弾に収録しましたが、フィッツナー指揮でも国立歌劇場管弦楽団(Polydor.95378-95383)による演奏で、宮沢賢治記念館の遺品(polydor .44456-61)として残されている盤と演奏者と同一ではあるが(おそらく同じ録音)品番違い。本命盤は未だに手に入りません。 ・・・つづく