前回の更新からかなりの時間が経ってしまいました。
「心象スケッチ『春と修羅』~宮沢賢治が聴いたクラシック」のアルバムについて再びお話ししましょう。
『春と修羅』に収められた詩の数は相当の数ですが、その中に登場、あるいは関わり合いのある音楽の数も多い。詩の着想とその時に頭に浮かんだ音楽、特にクラシックがたくさん登場する。そんな中から選んで収めたのが本アルバムです。
1922年(大正11年)11月27日に最愛の妹トシとの死別後、「永訣の朝」、「松の針」、「無声慟哭」(『春と修羅』/無声慟哭より )を書いたものの、そのショックから立ち直るのに約半年の時間を要し、翌年6月の『春と修羅』/無声慟哭の「風林」においてトシへの思いが蘇ります。さらに7月の青森・北海道経由樺太旅行で詠んだ『春と修羅』/オホーツク挽歌詩群のなかでその思いはさらにエスカレートします。そして翌1924年2月からは『春と修羅 第2集』の作品づくりがはじまります。
このCDの中ではM8からが『春と修羅 第2集』に収められた詩に関連し登場する曲ですが、個人的には以下の3曲の曲の流れがたいへん気に入っています。
8、夕べの歌 (シューマン)「七四 〔東の雲ははやくも蜜のいろに燃え〕」(「春と修羅 第二集」)
9、セレナーデ (シューベルト)「林学生」(「春と修羅 第二集」)
10、ロマンス ト長調 (スヴェンセン)「一五五 〔温く含んだ南の風が〕」(「春と修羅 第二集」)
詩から浮かび上がる情景に曲がさらに効果的な役割をもってイメージを広げるという賢治が得意とするパラフレーズという手法によるもののようです。1923,24年ごろが賢治にとってあらゆる面において創作意欲が充実していた時期ではなかったかと思われます。
そして、注目のM12 ♪主よみもとに近づかん は「四〇九 きょうもまたしょうがないな」(「春と修羅 第二集 )の詩に登場します。あえてここでは取り上げなかったが、この曲は、童話「銀河鉄道の夜」の主題歌といってもよい重要な曲でもあります。そして、その二つの詩・童話と密接に関係するのが「タイタニック号の沈没」なのです。・・・つづく