CD 宮沢賢治の作品に関わる『賢治が出会ったがクラシック・あらかると』 

 CD宮沢賢治の作品に関わる『賢治が出会ったがクラシック・あらかると』は、このシリーズ第3弾で2018年9月にリリースされました。

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●収録曲

  1チャイコフスキー交響曲第4番(第4楽章)Karl Muck W/ Boston Symphony Orch.

                       ・・・「陽ざしとかれくさ」『春と修羅』/春と修羅  

  2、 歌劇 ウィリアムテル序曲 Overture part4 “ Finale” /Arthur Pryor's Band    

                       ・・・「風景とオルゴール」異稿(「春と修羅」より)                     

  3、 交響曲第6番「田園」(第2楽章)/ Hans Pfitzner w/ Mitgl.d.Kapelle d.Staatsoper Berlin

                           ・・・小岩井農場」、文語詩「弓のごとく」                    

  4、 交響詩中央アジアの草原にて」 / Albert Wolff w/ Orchestra “Concerts Lamoureux”     

                                      ・・・童話「雁の童子」 

  5、「酋長の行進」組曲コーカサスの風景」第4幕より / Leopold Stokowski w/ Philadelphia Orch.   

                                     ・・・「牧馬地方の春の歌」(歌曲)

  6、 ドヴォルジャーク 交響曲第9番新世界より」第2楽章 / Hamilton Harty w/ Halle Orch.

                                            ・・・「種山が原」 “春はまだきの~”

  7、 交響曲第5番 「運命」(第1楽章)/Josef Pasternack w/ Victor Concert Orch.                       

                                      ・・・「冬と銀河ステーション」(『春と修羅

  8、 La Campanella ラ・カンパネラ / Ignace Paderewsk(P)      ・・・童話銀河鉄道の夜                         9、 Ave Maria アヴェ・マリア / Nellie Melba(S)   ・・・・・・童話「セロ弾きのゴーシュ」校異                             10、Träumerei トロイメライ 「子供の情景」より / Josef Pasternack w/ Victor String Ensemble

                         ・・・童話セロ弾きのゴーシュ                                       

11、Ungarische Rhapsodie ハンガリア狂詩曲 / Emanuel Feuerm an (Vc)

                               ・・・童話セロ弾きのゴーシュ                                            

12、LorelieローレライSchumann-Heink (S )              ・・・童話「土神と狐」

13、Die Beiden Grenadier 二人の擲弾兵 / 鈴木鎮一(Vn)     ・・・童話「チューリップの幻術」                         14、Swiming Walts スイミング ワ゛ルツ /東京帝国劇場専属管弦楽々手                                                                                              ・・・随想「イギリス海岸」、劇「饑餓陣営」

 

 ジャケットの絵は、今回も仙台在住(盛岡出身)のイラストㇾイター・画家の古山拓さんにお願いしました。

 絵は、大正13年8月27日10時半、斉藤宗次郎が宮澤賢治の花巻農学校の職員室を訪ね、およそ30分の間に賢治が「新世界」(ドボルザーク)に自作の詩をつけた歌を聴き、さらに蓄音機にてベートーヴェン「第8交響曲アレグロ」、モーツアルト交響曲40番」、チャイコフスキー「第2交響曲」、メンデルスゾーン真夏の夜の夢」、再びベートーヴェンの「田園・小川の辺り」を聴いたというシーン。それを斉藤宗次郎が著書「二荊自叙伝」の中の自らが書いた挿絵を基にして描いていただきました。

 この事実には二つの疑問があります。まず、8月27日という日は賢治の28歳の誕生日にあたります。「二荊自叙伝」には、このシーンの文面の前後に一切賢治の誕生日について触れていません。当時、誕生日という日はどういう日だったのでしょう?宗次郎が知らなかっただけなのでしょうか?

 もう一つは、蓄音機による演奏を30分の間に5曲も、それも交響曲を4曲聴いたとあります。当時のSPレコード盤は78回転で片面の収録時間は4分前後ですから、交響曲ともなると30分もので4枚組となってしまいます。それでもこの時代には、曲のおいしい部分だけを収めてA面とB面に別の曲のある部分だけを収録したものが結構出回っていたようです。あるいは、吹奏楽による演奏でおいしい部分だけを盤に収まるようにアレンジされたものなども実際ありました。

 それにしても「田園・小川の辺り」は第2楽章ですが、これだけでも15分近くありますから5曲を30分は無理なはなしです。

 おそらく賢治はそれぞれの曲の片面(約4分)を5曲かけたのでは?と推測するほかありません。賢治が歌う「新世界」を含めるとレコードの掛け替えの時間を加えてこれでざっと30分でしょうか。